DOUBLE STEAL ~イシヲモツモノ~
少し上げられた顔を、まるで品定めでもするように眺める視線に虫唾が走る。
「どうした?そんな恐い顔をして。せっかくの可愛い顔が台無しじゃないか。絵が欲しいんだろう?だったら俺のベッドへ――」
「嫌っ!」
ニヤニヤと笑いながら顔を近付けてきた赤峰を、未央は突き放した。
しかし、赤峰は逃げようとする未央の手首を掴み、強引に引き寄せた。
「離して!誰があんたとなんか!」
「フッ……そうか。残念だな。―― それならもう一つ別の条件を出そう。今度は君の得意な事だ」
そう告げてからしっかり掴んでいた手を離し、赤峰は背を向けて絵の前に立った。
「君に仕事を頼みたい。回収して欲しい物がある。報酬はこの絵だ」
言われて壁に掛かった父の絵に目をやる。
「回収?いったい何を回収しろって言うの?」
「【エターナル・グリーン・アイビー】を、コメットから回収して欲しい」
(えっ――)
「それなら出来るだろう?報酬はさっき言ったとおり、この絵。どうだい?悪い取引じゃないと思うが?」
思わず拳を握り締める。
コメットが石を集める理由を知らない頃なら、引き受けていたかもしれなかった。
けれど、今は違う。
あの石が元々は誰の物だったのか知っている今は。
(千聖の集めた影の石を奪う?そんな事――)
「俺の部屋に来るか。それとも石を回収して来るか。どちらの条件を選ぶかは君が決めればいい。タイムリミットは48時間。二日後のこの時間。それが過ぎたら取引は無かった事にする」
赤峰は未央の方に向き直り、確認するようにそう繰り返した。
…☆…