DOUBLE STEAL ~イシヲモツモノ~

「嫌――!」

 叫び声を上げてベッドから飛び起き、未央は自分で自分を抱き締めた。

 パジャマが汗でぐっしょり濡れている。

 時計の針は三時を指していた。

 さっき目を覚ましてから、まだ一時間も経っていない。

 赤峰が提示したタイムリミットまで、あと二十二時間弱。

 未央は静かにベットを降り、部屋を出た。

 リビングのソファーに腰掛けて、膝を抱え込む。

(パパ、ママ。私どうすればいいの?【エターナル・グリーン・アイビー】を持って行けば、パパの絵を手に入れられる。でも、そのためには千聖から石を奪わなくちゃならない。千聖から石を?そんな事―― 出来ないよ。出来ない……。でもパパの絵はどうしても取り返したい。だったら方法はあと一つしか無い。でも……嫌だ。初めての人が好きでも無い人だなんて―― そんな!)

 その時、ふいに千聖の部屋のドアが開いた。

 気付いた未央は、慌ててパジャマの袖で涙を拭った。

「そんなところで何してるんだ?」

 少し訝しげに眉を顰め、千聖が明かりをつける。

(初めての人は……)

「別に……何でもない」

 答えて、未央は無理やり微笑んだ。

「何でも無くないだろう。こんな時間に」

 千聖は未央の顔をチラリと見て向かい側のソファーに腰掛け、煙草に火をつけた。

 薄紫の煙が天井の灯りに向かってゆらゆらと昇っていく。

「ちょっと考える事があって……」

(好きな人……)

「―― 真夜中にか?」

 息を深く吸い込んで千聖が訊いた。

 少しして、視線を落としたまま未央は唇を動かした。



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