DOUBLE STEAL ~イシヲモツモノ~

「あの……あのね、訊きたい事があるの」

(だから千聖。お願い………お願い、私を……)

 未央は心の中で本心を呟きながら、同時に別の言葉を口にした。

「千聖に訊きたい事があるの」

「なんだ?」

「あのさ、あの……千聖、キスした事ある?」

「あぁ?何かと思ったら――」

 千聖は唐突な質問にフッと笑った。

「あんた何歳の人間に訊いてるんだ?」

「そうだよね、あるに決まってるよね。じゃあファーストキスの相手の人のこと覚えてる?」

「何だよそれ」

「その人って好きな人だった?」

「当然だろう?最悪な質問だな」

 千聖は呆れたように未央を見た。

 そんなくだらない事を訊いて、何になるんだとでも言いたげだ。

「それじゃあ、その……あの………」

「言いたい事があるなら早く言えよ」

「あのさ!それ以上の事もやっぱり最初は好きな人だよね?だったら!だったら……好きじゃなくてもそういう事できる?」

 急かされて、未央は一気に言葉を吐いた。

 千聖は暫しのあいだ唖然として未央を見ていたが、苦笑すると溜め息をついて額に手を当てた。

「何なんだよ……何かのアンケートか?」

「えっ?あ、そうなのアンケートなの。私、他に聞く人居ないから、だから―― 千聖………答えて」

 心臓が大きく波打っている。

 顔も熱い。

 千聖の視線が痛い。

 頭がカァッとして、聞こえるはずの時計の音も聞こえない。

 静寂を破って千聖の声が響く。

「できるよ」



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