DOUBLE STEAL ~イシヲモツモノ~

 その言葉にドキッとする。

「じゃあ……例えば……私に……でも?」

「あんたがいいなら」

 千聖の一言一言に、鼓動が早くなる。

 口も渇いてきて、未央はゴクリと唾を飲んだ。

「やって見せようか?」

「えっ?あの――」

 千聖は、言うや否や煙草を揉み消して立ち上がった。

 未央に歩み寄りその腕を掴む。

 そのまま強引に引き寄せると、立ち上がった未央の頬を両手で挟んだ。

(千聖――)

 未央は目を閉じた。

 千聖の顔が近付いてくるのを感じる。

(これで……これでもう思い残す事なくあの男のところに行ける。千聖、好きだよ。例え千聖が私のこと何とも思っていなくても後悔しない)

 目頭がじんと熱くなって涙が出た。

 あとからあとから零れて落ちた。

 千聖は未央の涙を目にすると、動きを止めた。

「報酬はあの絵――」

「えっ……?」

 耳に届いた言葉に、未央は驚いて目を開けた。


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