DOUBLE STEAL ~イシヲモツモノ~

「回収の標的は【エターナル・グリーン・アイビー】」

「千聖、何を――」

「もう一つの条件はベッドを共にする事。この馬鹿が。そっちを選ぶつもりだったんだろう。最悪だな」

「なに言ってるの?千聖、なにを――」

(何故そんな事を千聖が知ってるの?)

 千聖の口から紡ぎ出された言葉に、頭が混乱する。

 未央は訳がわからず、何度も瞬きを繰り返した。

「誤魔化そうとしても無駄だ。ちゃんと顔に書いてある。あんたは嘘が下手だから」

 思わず両手で顔に触れた未央に、千聖は微笑んだ。

「もういい。全部分かってる。いや、初めて会った夜からあんたが回収屋だと分かっていたんだよ。それにあんたももう分かっているはずだ。……俺がコメットだって事」

(そんな――)

 思ってもみなかった千聖の告白に、未央は腹を空かせた金魚のように口をパクパクとさせた。

「千聖……知っていたの?私が回収屋だって事、最初から知っていたの?知っていてドレスの時や、ケルベロスの時助けてくれたの?だったら何故―― どうして黙ってたの?知らないふりしてたの?」

 戸惑う未央の質問にはいっさい答えずに、千聖は続ける。

「昨日の夜、あんたのあとをつけた。俺の部屋を物色した形跡があったし、あんたの様子がおかしかったから。……気になったから……」

 千聖は、言葉を無くしてただじっと立っている未央を見つめた。

 それから徐にポケットから何かを取り出した。

 開かれた掌の上には、緑色に輝く石。

「【エターナル・グリーン・アイビー】。これが必要なんだろう?」

 その石を未央の手に握らせる。

「赤峰に渡してくればいい」

「千聖」

「あんたにやるよ」

「でもこれは――!」


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