DOUBLE STEAL ~イシヲモツモノ~
「手伝ってよ」
「手伝ってって何を?」
「私がコメットに遭えるように手伝ってって事。あなたこれまでの取材で、彼の手口とか知ってるでしょう?」
「まあ……」
「だから手伝って欲しいのよ」
千聖は溜め息をついた。
(そりゃ色々知ってるさ。でも――)
手伝えるわけがなかった。
何処の世界に、自分の盗みの手口を教える現役の泥棒が居るだろう。
苦笑した千聖に真紀子がニコッと笑う。
「じゃあ行きましょ」
「行くって何処へ?」
「あなたのマンションよ。近いんでしょ?こんな大切な話し、こういう所では出来ないじゃない。『壁に耳あり――』よ。だからあなたの所でじっくり相談しましょ」
矢継ぎ早に言葉を並べながら、真紀子は椅子から立ち上がり帰り支度を始める。
「でも………」
自分のマンションへ行く事を渋るように呟いた千聖を、真紀子は少し首を傾げて覗き込んだ。
「なに?女性なんか連れて帰ったら彼女が怒っちゃう?」
「だからあいつはそういう対象じゃ無いって――!」
「あ、やっぱり同棲してるんだ」
このあいだ【エターナル・グリーン・アイビー】を渡した時――
決して関わってはいけないと自分に言い聞かせてきたのに、思わず未央に口づけてしまった事が頭に浮かんできて千聖は目を逸らした。
グラスの中の氷を見つめている千聖の耳元に、真紀子が顔を近付ける。
「違うならいいわよね?例えば、私があなたの部屋に泊まったとしても」
思わず顔を見た千聖に、真紀子は微笑んだ。
…☆…