DOUBLE STEAL ~イシヲモツモノ~
「そんな顔しない。彼女、言っていいのか悪いのか困ってるじゃないの。ね、教えて」
こう何度も訊かれては仕方ない。
未央は、ずいぶん強引な人だと思いながら口を開いた。
「未央……小野寺未央です」
「可愛い名前ね。顔も可愛いし。男の子にもてるでしょ?年齢は?」
「十七歳です」
「ふぅん、十七……千聖若い娘が好きなんだ。どこで知りあったの?ナンパ?」
答えに困って、未央はまた千聖を見た。
千聖は口をきゅっと結んで眉間に皺を寄せていた。
かなり機嫌が悪そうだ。
「あの……私部屋に行ってます」
真紀子が微笑む。
「そうね、その方がいいわ」
そしてそのまま未央の耳元に顔を寄せ、千聖には聞こえないように「邪魔しないでね。大人の付き合い」と囁いた。
(え――?)
すぐに離れて千聖に歩み寄る。
「じゃあ千聖、あなたの部屋に行きましょう」
理由が分からないと言う顔で立っている未央を後目に、真紀子は千聖の腕を取った。
「ほら早く」
「せっかちだなぁ」
「そうよ、私はせっかちなの。食べたい物はすぐ食べたい。欲しい物はすぐ欲しいのよ」
話しながら、今度は千聖の首に腕を絡ませる。
「やめろよ」
「彼女が気になるの?」
小声で訊かれ、千聖がチラリと未央に目をやる。
未央は自分の部屋の前に立って、何か言いたそうにこちらを見ていた。
「部屋に近付かせないためよ。話し、聞かれると困るでしょ?」
真紀子がフッと微笑む。
それからふいに、千聖の唇を自分の唇で覆った。
「あっ……」と小さく声を出して未央は背を向けた。