DOUBLE STEAL ~イシヲモツモノ~
「ブー、はずれ。正解は八個」
「えぇっ !? 八個も食べたの?」
「そう。でも、その後気分悪くなって……もう最悪」
響が顔を顰めて胸を押さえて見せる。
「それからしばらく食う気しなかった」
「フッ……ヤダ、響ったら」
思わず笑い出した未央を見て、響きも微笑んだ。
少ししてからまた響が口を開く。
「未央」
「なに?」
「俺に話せよ。マンションで何があったのか。構わないから。何も気にしなくていいから」
「響………」
「な?」
促され、未央は大きく息を吐いてコクリと肯いた。
「千聖が……女の人を連れて来たの」
「恋人か?」
首を横に振る。
少し微笑んだ顔が引きつった。
「同じ新聞社の人って言ってた」
「ふぅん」
「でもね、その人私に『邪魔しないでね』って言って………あのね、千聖にね、あの――」
そこまで口にして、未央は真っ赤になって俯いた。
テーブルの上の拳を、ギュッと握り締める。
それから小さな声で続けた。
「………キスしたの」
途端に大きな目から涙が溢れた。
「千聖にキスしたの。私が見ている前で」
「未央……おまえあいつを――」
「ごめん、ごめんね響。響の気持ちは分かってる。その響に千聖のこと相談するなんて酷いと思う。だけど私、千聖のこと好きなの。好きになっちゃったの……」
(ヤッパな……)
響は心の中で呟いた。