DOUBLE STEAL ~イシヲモツモノ~
MISSION 21 ― アイズ・オブ・マドンナ ―
七つの影の石のうちの一つ、【アイズ・オブ・マドンナ】の在処はあの日の翌朝、真紀子から千聖に伝えられた。
石はその名にもっとも相応しい所――
女神像の右の瞳に埋め込まれているというのだ。
その像は、中央美術館の中庭にある噴水の真ん中に建っていた。
ドーナツ状に建てられた建物。
その中のやはりドーナツ状の庭。
円形の噴水。
そこの真ん中の一段高くなった場所。
閉館後は、ハッキング出来ないように完璧にプロテクトされたコンピューターが制御する、これでもかと言わんばかりの赤外線センサー。
おまけに真紀子にはコメットに遭えるように手伝ってくれと付きまとわれていたし、溝口とは違って「予想した日と違ってたな」などと誤魔化せそうにもなく――
ともかく真紀子と仕事で組んでいる間は動けそうにないと、千聖は考えていた。
中央美術館のパンフレットをテーブルに放り出して、ソファーに仰向けになり溜め息をつく。
カタンと音がして未央が部屋から出て来た。
「おはよう千聖。休みなのに早いね」
創立記念日で学校が休みだった未央は、ソファーにドスンと腰掛けるとテーブルの上のパンフレットを手に取った。
「なに?これ」
「あ……返せよ」
飛び起きた千聖の手をスルリと避ける。
「あ、中央美術館だ。私明日ここへ行くんだよ」
「え?」
「鑑賞会だって。美術の先生がそういうの好きで、本物の芸術に触れようとか言っちゃって。本当は自分の趣味なんだよね。千聖はどうしてこれ――」
「別に何だっていいだろう」
「あ、真紀子さんとデート?」
返された答えに、構わず未央は話しを続ける。
「だったら下見しておいた方がいいよ。紙なんか見てても分かり難いでしょ?話が弾みそうな展示物のある場所とか、二人っきりになれる場所とか」
「そんなんじゃない。大人を揶揄うな」