DOUBLE STEAL ~イシヲモツモノ~
答えた未央が、柳に飛び付こうとする蛙のようにピョンピョンと跳ねる。
二人の身長差は二十センチ以上。
確かに、千聖には見えても未央には噴水に遮られて見えないかもしれなかった。
「水ってさ、透明な物のはずなのにね」
「……そうだな」
千聖は何かを思い付いたようにフッと笑った。
「そろそろ出ようか?」
「もういいの?」
「ああ――」
「そう……」
一階のフロアに入ると、少しガッカリしたように未央が俯いた。
部屋に帰れば、千聖はまたいつもの千聖に戻ってしまう―― そう思ったのだ。
それをチラリと見た千聖が言葉を続ける。
「でも、ついでだから少し散歩でもしていくか。天気もいいし」
「ホント !? 嬉しい!あっ――」
思わず大声をだして、未央は慌てて口を押さえた。
再び周囲の人の視線が集まる。
「ドジ」
千聖が笑いながらコツンと額を弾いた。
「エヘヘ……」
それでも未央は嬉しかった。
千聖が自分を見つめていてくれるだけで。