DOUBLE STEAL ~イシヲモツモノ~
千聖が躊躇無く噴水の中に飛び込む。
赤・青・白と、ライトが点滅する。
千聖の姿も噴水に飲み込まれ確認できなくなる。
次の瞬間、真紀子は自分の頭上に差し掛かる人影に気付いた。
「コメット !? 嘘―― 待って!訊きたい事があるの!」
濡れたマントから雫が垂れる。
思わず片目を閉じた途端、もう一方の目に黒い大きな何かが落ちて来るのが飛び込んだ。
「きゃっ!」
咄嗟に声を上げ、真紀子が頭を抱えてその場にうずくまる。
「真紀子!」
直後、噴水を飛び出した千聖が駆け寄る。
そして、真紀子の頭からスッポリ被ったビショビショに濡れたマントを外してやった。
「コメットは !?」
真紀子の視線に捉えられ、千聖は両手を広げて肩を竦めた。
「千聖、顔を見た !?」
「いや、噴水が出るまでは姿だけは見えてたけど」
「そう……」
真紀子は溜め息をついた。
それから足下に落ちたマントに目をやった。
「何なの?これ……こんなのレディの頭に被せるなんて酷いわ」
不満げに口を尖らせながら手で顔を拭う。
真紀子の顔は溶けたアイラインで目の周囲は黒くなり、唇からはみ出した口紅で口の辺りも真っ赤になった。
まるでピエロ――
「真紀子……顔。フッ……クックックッ………」
「何よ、ちょっと失礼じゃない?」
「ごめん………でも……」
ずぶ濡れの千聖はムスッとした真紀子に背を向け、口を押さえて笑い続けた。
暫くしてやっと噴水が止まると、二人は女神像を振り向いた。