DOUBLE STEAL ~イシヲモツモノ~
MISSION 22 ― 船上パーティーへの誘い ―



「千聖さん、おはようございます」

 朝の取材を終え関東日報へ戻った千聖は、社会部のドアを開けた途端、聞き覚えのある女性の声に足を止めた。

 一瞬目を見開いてから、微笑んでいるその女性を見つめる。

 それが誰なのかは、直ぐに分かった。

 永池物産の御婚約パーティーで知り合った米村瞳だ。

「あなたは……瞳さん」

「あら、覚えていて下さったんですね。嬉しい!」

 胸の前で両手をぎゅっと握り締めて微笑んだ瞳が、直後、千聖に抱き付く。

 千聖は慌てて周囲を見まわした。

 いつもは怒鳴りまくっているデスクの村岡も含め、みんな呆気に取られてポカンとしている。

「こんな所で何してるんですか?」

 さり気なく肩を掴んで押し退けながら訊くと、瞳はニッコリ微笑んだ。

「私、またお会いしたくて千聖さんを捜しに来ましたの。あの時、関東日報の記者だって仰ってましたから」

「それは光栄ですね」

 思わず足下に目をやって尋ねる。

「今日はお一人なんですか?」

「えっ?」

「クレオパトラは――」

「ああ、今日はクレオパトラはお留守番です。あの子に会いたいと?」

「いいえ、そういうわけでは……」

 クレオパトラには色々と世話になっているので―― などと言えるはずも無く、千聖は取りあえず微笑んだ。

「綺麗な方ね。千聖のガールフレンド?」

 その時、何故か突然真紀子が声を掛けてきた。

(なんだ?急に――)

 思わず顔を見る。

 真紀子は千聖の方ではなく、真っ直ぐに瞳を見つめていた。

「紹介してくださる?」

「ああ……こちらは――」

 発しかけた千聖の言葉を遮って、瞳が口を開く。


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