DOUBLE STEAL ~イシヲモツモノ~


「それに……それに私まだ高校生だし、十七だし、まだちょっと早いんじゃないかな?……とか……。あ、千聖のことは好きだよ……だけど………その……」

 千聖は突然額に手を当てて笑い出した。

「クックックッ……」

「千聖?」

「そういう事か……良く覚えておくよ」

(な――?なに?私、なんか変なこと言っちゃったかな?)

 それからキョトンとしている未央に、今度は違う言い方でもう一度尋ねた。

「あのな、今夜暇だったらドライブに付き合って欲しいんだよ。それだけだ」

「えっ?………なんだそうか。ビックリした。私はまたてっきり――」

 言いかけて、未央はまた真っ赤になった。

「『てっきり』なんだって?」

 千聖が顔を覗き込んで、わざと問い掛ける。

「なんでもない」

 耳まで真っ赤になっているのが自分でも分かって、未央は両手で顔を覆うとクルリと背を向けた。

 その様子に千聖は静かに歩み寄り、未央を後ろから抱き締めた。

 そして耳元にそっと唇を寄せた。

「未央……そんな心配いらないよ。大丈夫、分かってるから。好きだからって、男だからってすぐ話しがそっちに行くわけじゃない」

「千聖――」

 少し黙って未央は口を開いた。

「なんか複雑な気分……」

「なにが?」

「ホッとしたみたいな、ガッカリしたみたいな……私やっぱりまだ女性としての魅力無いのかなって思ったりして」

 抱き締めていた腕を緩め、肩を掴んで未央をこちらに向かせる。

「魅力は十分あるさ」

「ホント?」

「ああ、本当だ。胸はちょっと小さいけどね」

「もう!またそれを言う!」

 拳を振り上げた未央の、無防備な顎を軽く摘んで唇を掠め取る。

 あっ―― と小さく声を上げ、直後に未央はまた真っ赤になった。

「とにかくドライブに行こう。安全運転に心掛けるから」

「はぁ……なんか熱いね」

 手でパタパタと顔をあおぎながら大きく深呼吸した未央を見て、千聖は微笑んでもう一度未央を抱き締めた。



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