DOUBLE STEAL ~イシヲモツモノ~


(そして千聖のお父さんは、奥さんと一緒に海で亡くなった。お父さんが持っているはずの石は他人の手に渡っていた。千聖はその理由を知っているのかしら?隠された秘密ってどういう事なのかしら――?)

 今の千聖になら、問い掛ければ答えてくれるかもしれない。

 けれど、未央の心は何となくそうする事を拒んだ。

「だから全ての石が集まってもまだ終わらないんだ」

 千聖はメモをしまいながら、自分に言い聞かせるように呟いた。

 潮風が千聖の髪をサラサラと撫でていく。

 未央はしばらく黙ったあと、視線を落としたままの千聖に向かって口を開いた。

「ねぇ、【ワンダー・イーグル】の回収方法は決まったの?」

「ああ、一応。それで―― 頼みたい事があるんだ」

「なに?」

「石の回収を頼みたい。未央―― いや、ティンクに」

「私……に?」

 未央は胸に手を当てて、小さく首を傾げた。

「この橋の上で、下を通る船から俺が渡す【ワンダー・イーグル】を回収してもらいたい」

 こちらを向いた千聖の目をじっと見る。

 夜の闇のような真っ黒な瞳。

 けれどもそれは、とても強い意志を感じる輝きを持っていた。

(千聖の目……綺麗。もしかしたら、この世界中のどんな宝石より綺麗かも知れない)

 その瞳にじっと見つめられているのだと思うと、未央は胸がドキドキした。

 真っ直ぐ目を合わせたまま答える。

「私で良ければ、その依頼お受けします」

 千聖はニッコリ微笑んだ。



…☆…

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