DOUBLE STEAL ~イシヲモツモノ~

 それでも響以外に、この仕事を手伝って貰えそうな人物はなく――

 未央は机の上の落書きに目をやったまま口を開いた。

「ね……響」

「なんだ?」

「あのさ、例えばだけど、私が夜どこかへ出掛けたいって言ったら―― 付き合ってくれる?」

「えっ?」

 響は思わず周りを見回し、それから少し赤くなって未央に顔を近付けた。

「も、もちろんだよ。おまえが行きたいなら何処だって付き合うぜ。いつでも何処でもOKさ。で、何処なんだ?その行きたい所って」

「ん……」

(やっぱりマズイかな……でも、他に頼める人なんていないし)

 考えが行ったり来たりして、決めかねている未央を響が急かす。

「いいから言えよ。場所によっちゃ親父に車借りなくちゃなんないから。あ、俺免許取りたてだけど安全運転するからさ。楽しみだな。そうだ、未央の好きなあの曲、車で聞けるようにダビングしておくよ。それでさ――」

 まだ悩んでいる未央をよそに、響はもうすっかりその気になっていた。




…★……★……★…


☆NEXT☆

「千聖さん、さっきから何も召し上がっていらっしゃらないようですけど」

「瞳さん……ちょっと胸が」

「まあ、偶然ですわ。私も胸がいっぱいで―― だって暗い甲板で千聖さんと二人きり。とってもロマンチックなんですもの」

「気分が……」

「そうですわね。気分が盛り上がります」

「もう我慢できない……」

「そ、そんな……嫌ですわ。我慢できないなんて。こんな所で」

(いい加減に気づけよ!俺は船酔いで気分が悪いんだ。オェッ……)


  MISSION 23
  ― 神部の思惑 ― へ続く。



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