DOUBLE STEAL ~イシヲモツモノ~

「瞳さん、ちょっと失礼します」

 乗船して暫くしてから、千聖は瞳をパーティー会場に残してホールへ出た。

 そしてずっと手にしていた、リボンの掛かった包みを持ってクロークへ向かった。

 荷物を預けている客の横で少し待つ。

「お預かりいたします」

 係りの女性が60番の札を差し出したのを見て、すぐに包みをカウンターに置く。

「お願いします」

「はい。お預かりいたします」

「よろしく」

 千聖は微笑んで61番の札を受け取った。

 宝石の入った神部の鞄は、確かにこのクロークに預けられていた。

 秘書が中を確かめてから札を受け取るところをチェックしたので、間違いない。

 あとは時間を待つだけだ。

 千聖は、はやる心を押さえながら瞳の元へ向かった。

「すみませんお待たせして」

「どちらへ行ってらしたの?」

 そう訊いてから、瞳はさっきまで千聖が持っていた包みが無いことに気付いた。

「ああ、クロークでしたの」

「ええ。瞳さんにちょっとしたプレゼントを持って来たのですが、もっと後でお見せしようと思って」

 途端に瞳は目を輝かせた。

「私に―― ですか?」

「ええ」

「嬉しい!千聖さんからプレゼントをいただくなんて、思ってもみませんでしたわ」

「ただ、僕が子供の頃好きだった物なので、瞳さんに喜んでもらえるかどうか……」

「いったい何かしら。ああ、早く見たい!」

 両手を胸の前で組み、無邪気に喜ぶ瞳を見て千聖は微笑んだ。


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