DOUBLE STEAL ~イシヲモツモノ~
「女性の心を掴むのが上手そうだ。それに―― 動物を手懐けるのも」
グラスの中の琥珀色の液体は、まだたっぷりと残っている。
だから酒に酔って冗談を言っているわけでは無い。
「猫なんてお手のものなんだろう?ビー玉などをプレゼントしたりして」
(この男―― 気付いている?そうだ。この男は気付いている。それも今日気付いたわけじゃない。以前から気付いていて、わざと瞳さんに石の話をさせ俺をここへ呼んだんだ。理由は何だ?俺に対する挑戦なのか?それとももっと別の何かか?)
いや、そんな事を考えてもしょうがないのだ
手にしていた石をケースに戻し、テーブルへ置く。
(俺の正体を神部が知っていようがいまいが、そんな事はどうでもいい。やる事は決まっているのだから)
神部の言葉には応えずに、千聖は瞳の肩へそっと触れた。
「瞳さん。そろそろ行きましょうか?もう石も見せていただいたし」
「えっ?」
「また二人きりで――」
「え……ええ」
瞳は心持ち頬を染めて肯き、すぐに立ち上がった。
「では、おじさま。私たち失礼します」
「ああ。また今度、屋敷の方へも遊びにいらっしゃい。彼も連れてね」
「はい」
千聖は黙ったまま瞳の横で頭を下げた。
…★……★……★…
☆NEXT☆
「クソッ!神部の奴。最初から俺がコメットじゃないかと疑っていたんだ」
「えっ、そうなの?それじゃあ計画は中止?」
「いや、やるよ。石は絶対に取り戻す」
「どうやって?」
「見てろよドカンと一発やってやるから」
「えっ?花火でも打ち上げるの?」
「未央……初めてまともな事言ったな。安心したよ」
「そう?良かった。ホントはね、爆弾で船を吹っ飛ばすのかと思ったんだけど――」
「………」
MISSION 24
― 空飛ぶワンダー・イーグル ― へ続く。