DOUBLE STEAL ~イシヲモツモノ~
「じいちゃんにはいろんなモノをもらったよ」
「どんな物?私にも見せてくれる?」
興味津々で顔を覗き込む未央に、千聖はくすっと笑った。
「そういう物じゃないよ。もらったのは」
「じゃあどういうモノ?」
「そうだな……知識って言えばいいかな」
「知識?」
「ああ。俺が石を集める事が出来たのも、それのおかげなんだ」
「そうか……」
未央が頬に手を当てて肯く。
それからニッコリ微笑んだ。
「千聖、すごくいいものもらったね」
「ああ、俺もそう思う。これは例えどんな怪盗だって奪うことは出来ないから」
「コメットでもね」
「ティンクでもな」
顔を見合わせると、未央はまた口を開いた。
「だいいち、千聖からものを奪える人なんかいないよ」
「そうでもないさ。未央には奪われたから」
「えっ?あ……」
未央は、千聖の部屋に忍び込んだ時の事を思い出した。
それに、もしかしたら【エターナル・グリーン・アイビー】だって持ち去っていたかも知れなかった。
「でもあの時は何も取ってないよ!そりゃちょっと借りて行こうかなぁとか思ったけど――」
「いや、奪ったよ」
「だから何も取ってないって!」
「奪ったんだ――」
呟きながら肩を抱いて引き寄せる。
「未央は心を奪った。俺の―― 今まで一度も、誰にも奪われた事のなかった心を」
「千聖?」
「だから返してくれるまで離さない。ずっと離さない」
未央がフッと笑う。
「なに?」
「ウソつき」