DOUBLE STEAL ~イシヲモツモノ~
「あ………あぁああぁっ!」
未央は大声を上げて、突然跳ね起きた。
「どうしたんだよ?」
「わ、私大変なこと忘れてた!」
「それって何?」
黒い瞳に覗き込まれて、言い淀む。
「え―― っと――」
それから未央は、宙を見ながらポンと手を叩いた。
「あ!そうそう、次の仕事の依頼人と会わなくちゃいけなかったんだ。ああ、良かった思い出して。もうちょっとで忘れちゃうところだった。忘れたりしたら信用問題だよね。もう仕事無くなっちゃう。ゴメンね千聖。せ―― せっかくいい雰囲気だったから私もすっっっごく残念なんだけど、行かなくちゃいけないから、今から用意するね。良かった良かった思い出して」
「ふぅん」
ベッドに座った千聖を見ながら、後ろ向きにドアに近付く。
手探りでドアを開けると、未央はその隙間から逃げるように抜け出した。
「じゃあ――」
バタンと音がしてドアが閉まると、途端に千聖はベッドに倒れて笑い出した。
「プッ!……フッフッフッ………クックックックッ……ちょっと揶揄い過ぎたかな」
暫く笑ってから、煙草に火を付ける。
「未央……ここからはまた一人でやるよ。危険な事が起きるかも知れない事に、おまえを巻き込むわけにはいかないからな」
額に掛かった髪を掻き上げ、千聖はフウッと煙を吐いた。
…★……★……★…
☆NEXT☆
「ねえ、千聖。何処へ行くの?」
「人に会いに行くんだ」
「それって誰?私の知ってる人?」
「未央の知らない人だよ」
「……女の人でしょ?」
「そうだけど?」
「駄目!行かないで!だって千聖女の人に弱いから、迫られたらまたキスなんかしちゃうもん」
「フッ……大丈夫だよ。お婆さんだから」
「そっか。じゃあ行っていいよ。行ってらっしゃぁい!」
「現金なヤツ……」
MISSION 26
― 途切れた糸 ― へ続く。