DOUBLE STEAL ~イシヲモツモノ~
MISSION 26 ― 途切れた糸 ―
永池の屋敷。
秋江の住む日本式家屋に最も近い塀を越えると、千聖は月明かりの射す縁側に目をやった。
『今度いらした時には、きっと御両親のことをお話ししますから』
そう――
今日ここへ来たのは、秋江からあのホワイトローズ号の沈没した日に起きた事を聞くためだった。
何故、千聖の父の集めた石を七人が持っているのか?
何故、大勢の乗客の中で千聖の両親だけが死んだのか?
秋江はきっと自分の知っている全てを、包み隠さず話してくれるはずだ。
自分の罪を償うためにも。
そしてそれを聞けば、両親が突然行方不明になった理由も、父の『それまでは何としてもこの石を護らなくては』というメッセージの意味も分かるかもしれない。
千聖は期待していた。
おのずと足取りは軽くなった。
庭の隅の生け垣の端にある戸口から、秋江のもとへ向かう。
約束通り、秋江は一人で縁側にいた。
「こんばんわ。お待ちしていましたわ」
「こんばんわ。お元気でしたか?」
「ええ、元気でしたよ。だって元気にしていれば、またあなたにお会いできるのですもの。隆利さんに生き写しのあなたに会うこと。今の私に、これ以上の薬はありませんわ」
千聖の問いかけに、秋江は嬉しそうに微笑んだ。
しかしその顔色が以前より悪くなっているのを、千聖は敏感に感じ取っていた。
「お話ししましょうね。私の知っている事を全て」
庭の池に映る月に雲がかかる。
秋江は時間がもったいないとでも言うように、さっそく話し始めた。