DOUBLE STEAL ~イシヲモツモノ~
「私は、あなたのお父様とは七年ほど前からの知り合いでした。宝石商をなさっていたお父様には、よくここへも品物を持って来ていただきました。そして、私以外の影の石を持つ方たちも、同じようにお知り合いだったようです。けれど私たちは、お互いにはその存在すらも知りませんでした。知り合う理由もなかったのです。あの時までは」
緩やかに吹いていた風が一瞬止まる。
それがまた髪を揺らすと、秋江は額に掛かった髪を掻き上げた。
「ある時突然知らない男性から電話が掛かって来ました。神部という男でした」
「神部……」
(【ワンダー・イーグル】を持っていた、古物商だというあの男だ)
頭の中で呟き、千聖は拳を握り締めた。
「その男はいったい何と?」
「神部という男は言いました。『一生幸せに暮らせるようになる石を、欲しくはないですか?』と。私は、何を馬鹿げたことを言っているのかと思いました。でも――」
秋江は目を伏せた。