DOUBLE STEAL ~イシヲモツモノ~
『私は今、七人の仲間を捜しています。幸せを呼ぶ石を、共に持つための仲間です』
「わけが分かりませんわね」
『幸せを呼ぶ石は七つあるのですが、それを手に入れようと言うことなんです』
関心なさそうな秋江に、神部は熱心に話し始めた。
『その石はどうしても七つ集めなければならないのです。けれど一人で全部買うにはとうてい資金が足りません。今、仲間は六人います。あと一人―― そう、あと一人だけなんです。あと一人いれば、一人一つずつ、七つ揃えることが出来る。そうすれば私も、他の六人も辛い日々から脱することが出来るのです』
「何かの宗教ですの?」
秋江は馬鹿にしたように鼻で笑った。
全く気にする様子も無く、神部が続ける。
『石を崇めているわけではありません。正しい言い方をすれば、その石を集めることによって【宝】への道が開く。そしてその【宝】で、幸せを手に入れることが出来ると言うべきでしょう。どんな願いも叶える事が出来るという【宝】で』
「そのために資金協力しろと言うことですの?そんな事でしたら――」
『いいえ違います。あなたも私たちと一緒に、願いを叶える【宝】で辛い毎日に別れを告げようと言っているのです。知っていますよ……あなたの苦しみ』
「えっ――?」
相手の唐突な言葉に、秋江は思わず聞き返した。
こちらの反応に気付いているのかいないのか、神部はまるでベテランのセールスマンのように淡々とした口調で話を進めた。
『だからこそ大勢の人の中からあなたを選んで、今日こうしてお電話を差し上げたのです』
「な―― 何の事ですの?」
『御主人との事ですよ。心の通じ合わない、あなたの御主人』
その一言で、秋江は言葉を失った。
『あなたが一生懸命尽くしているのにそれをちっとも分かろうとしないばかりか、自分勝手に振る舞い、何か気に入らない事があると全てあなたのせいにして、お前は馬鹿だ気が利かない女だと罵る御主人。あなたの気持ちを無視し、理解しようともしないくせに、自分の事はそんな事言わなくても分かるだろうと言う御主人』
「止めてください」