DOUBLE STEAL ~イシヲモツモノ~
未央の父親の描いた絵は、千聖のマンションのリビングの壁に飾られる事になった。
もちろん【その背に描かれし所】はチェック済みだ。
しかしそれは予想していた【地図】とは違っていた。
【カイバオケノソコニネムル、イトシキミコヘノオモイ。サイゴノカギヲトキ、タカラヲテニスルハ、イシヲモツモノ】
カタカナで認められたその文には、ハッキリとした場所の指定も無かったが、【カイバオケノソコ】―― この部分が場所を示すという事は予想できた。
しかし――
「【飼い葉桶】か……。とうとう行き詰まったって感じだな」
千聖は銜えていた煙草を揉み消して、大きく伸びをした。
途端に、隣のデスクでパソコンの画面と睨めっこをしていた溝口が笑った。
「なんだ?『行き詰まった』って。おまえでもスランプがあるのか?」
「まあな。もうちょっと文才があればって思うよ」
「よく言うよ。成績優秀・スポーツ万能・容姿端麗。おまけに学生の頃からモテモテで女の扱いにも長けているヤツが、この上まだ才能を求めるのか?貪欲なヤツだな」
「『向上心』って言って欲しいわよね。はい、千聖」
話しながら真紀子が二人の間に立ち、コーヒーの入った紙コップを差し出す。
千聖はそれを受け取ると、チラリと溝口に目をやって一口飲んだ。
「それにその向上心があるから、魅力的なんじゃないの。分かってないわね」
「へえ……そんなもんですか」
「そんなもんよ。ま、彼が女心を引き付ける理由は他にもあるけどね」
真紀子の言葉に、溝口は肩を竦めた。
千聖は、まるで自分には関係ないとでもいうように知らん顔だ。
手にした紙コップを口に運んでから、真紀子が続ける。