DOUBLE STEAL ~イシヲモツモノ~
MISSION 28 ― 知られた秘密 ―

 静かな部屋の中。

 ソファーに寝そべって、響は考えていた。

 そう――

 あの夜から、ずっと考えていた。

 食事中も風呂の時も、授業中も考え続けていた。

 ―― もちろん未央の事だ。

 何故あんな時間に、あんな場所へ行かなければならなかったのか?

 何故あんなに必死になって、落下傘を手に入れようとしていたのか?

 そして何故、泣いていたのか……

 けれど学校で未央と顔を合わせても、何一つ訊くことも出来ず――

 響は自分の思い切りの無さに、自己嫌悪に陥りそうだった。

「フゥ……落下傘か……」

「なぁに?スカイダイビングでもやるつもり?」

 何となく呟いた言葉に返された突然の声に、響はソファーから飛び起きた。

「そんな事して、何かあったらどうするの?あんた流石家の跡取り息子なのよ。私は嫌だからね、あんたの代わりに跡取るのなんて」

「なぁんだ……また来たのかよ」

 響は声の主が姉の真澄だと分かると、もう一度ソファーに倒れた。

 真澄は響より十歳年上。

 大学の英文科を卒業後、今は国際線スチュワーデスとして世界中を飛び回っている。

 普段は都内に借りたマンションで一人暮らしを楽しんでいたが、給料前になるとたびたび実家を訪れた。

 そして買い置きの洗濯石鹸や醤油や、もらい物のハムなどを根こそぎかっさらって行くのだ。

「『なぁんだ』じゃないでしょ。人の言ってること聞いてるの?」

「聞いてるよ、うるせえなぁ。自分だって飛んでるくせに」

 真澄は冷蔵庫から缶ビールを取り出すと、プシュッと音を立ててタブを引いた。


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