DOUBLE STEAL ~イシヲモツモノ~

「え……ああ、まあ、うっすらと……」

 響は思わず言葉を濁した。

 頭の中には、あの悲しげな千聖の瞳が浮かんでいたのだ。

 両親の死の知らせを聞いて、泣き腫らした――

「千聖君、ああいう遊びに関する事詳しかったからね。よく訪ねて来てた、御祖父さんに教わってたみたいだけど」

 一旦言葉を止める。

 そして頭の後ろで両手を組み、天井を見上げた。

「あの子、どうしてるんだろう?独りぼっちで……。響より五学年上だったから、今は二十二か三くらいかな。すごく可愛い子だったけど、カッコ良くなってるだろうな」

(カッコイイかどうかは分かんねえけど、今でもあそこに住んでるぜ。未央と一緒に)

 響はそう言いたいのを我慢した。

 真澄の呟きは聞かなかった事にして、話しを戻す。

「俺、千聖と一緒に遊んでたんだ?」

「そうよ。さっき言ってた落下傘も千聖君に作り方教えてもらって、マンションの上からたぁっくさん落っことしてさ、近所の人から苦情が来て――」

 真澄の言葉を遮って訊く。

「でも落下傘なんて、誰だって作れるんじゃないの?」

「それがそうでも無いのよ。千聖君のはね」

 いかにも千聖のは特別だというような言い方をした真澄に、響は不思議そうな顔をした。

「あの子のは、傘の大きさ・糸の長さ・重りの重さを計算してバランスを考えて作るから……フッ……」

 真澄は、また何かを思いだして笑った。

「何だよ、一人でうけて」

「猫よ」

「え?」

「あの子ね、何処かから子猫を拾ってきた事があったの。それでね、その猫を大きな落下傘に付けた段ボール箱に乗せてマンションの五階から落としちゃって。それは上手くいったんだけど」

(千聖と落下傘。落下傘と未央。未央と千聖……何なんだ?この変な感じ)


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