DOUBLE STEAL ~イシヲモツモノ~

「千聖は知ってるのか?」

 未央が肯く。

「そうか……あいつには話してたんだ。俺には秘密にしていて、あいつには―― !!」

「違うの!そうじゃないの!」

「何が違うんだよ!」

「あのね、響――」

「あいつは知っているんだろ !?」

「聞いて、響――」

「おまえが自分から話しでもしなきゃ、そんな事分かるわけ無いじゃないか!」

「響!お願いだから私の話を聞いて!」

 叫ぶように言った未央に、響は背を向けて空を仰いだ。

「あのね、千聖に初めてあった夜ね、私ミスして車で終われて――。それで偶々走り出そうとしていた千聖の車に飛び乗って、助けてもらったの。千聖は何も訊かなかった。何も言わなかった。でも、ずっと後になって言われた。……その時から気付いていたって」

 未央は【エターナル・グリーン・アイビー】を手渡され、初めて千聖に口づけされた夜を思い出して思わず唇に手を触れた。

 響が振り向く。

 握り締めた拳は震えていた。

「俺は毎日おまえと一緒に居た。千聖よりずっと前から。ずっと長い時間。でもこれっぽっちも気付かなかった。なのに……何で会ったばかりのあいつが気付くんだよ?そんなのどう考えたっておかしいよ」

「響……」

 確かに響の言うとおりだ。

 たぶん普通なら、怪しいとは思ってもただそれだけだっただろう。

「おまえが話したんなら、話したでいいよ。だからウソ付くなよ!頼むから、俺にはホントの事言ってくれよ!何故千聖がおまえの秘密を知ったのか――」

「それは彼が同じ穴のムジナだからだよ」

 響の言葉を遮った誰かの声に、二人が振り向く。

 暗い空から、冷たい雨が音を立てて落ちてきた。



< 285 / 343 >

この作品をシェア

pagetop