DOUBLE STEAL ~イシヲモツモノ~
「千聖は知ってるのか?」
未央が肯く。
「そうか……あいつには話してたんだ。俺には秘密にしていて、あいつには―― !!」
「違うの!そうじゃないの!」
「何が違うんだよ!」
「あのね、響――」
「あいつは知っているんだろ !?」
「聞いて、響――」
「おまえが自分から話しでもしなきゃ、そんな事分かるわけ無いじゃないか!」
「響!お願いだから私の話を聞いて!」
叫ぶように言った未央に、響は背を向けて空を仰いだ。
「あのね、千聖に初めてあった夜ね、私ミスして車で終われて――。それで偶々走り出そうとしていた千聖の車に飛び乗って、助けてもらったの。千聖は何も訊かなかった。何も言わなかった。でも、ずっと後になって言われた。……その時から気付いていたって」
未央は【エターナル・グリーン・アイビー】を手渡され、初めて千聖に口づけされた夜を思い出して思わず唇に手を触れた。
響が振り向く。
握り締めた拳は震えていた。
「俺は毎日おまえと一緒に居た。千聖よりずっと前から。ずっと長い時間。でもこれっぽっちも気付かなかった。なのに……何で会ったばかりのあいつが気付くんだよ?そんなのどう考えたっておかしいよ」
「響……」
確かに響の言うとおりだ。
たぶん普通なら、怪しいとは思ってもただそれだけだっただろう。
「おまえが話したんなら、話したでいいよ。だからウソ付くなよ!頼むから、俺にはホントの事言ってくれよ!何故千聖がおまえの秘密を知ったのか――」
「それは彼が同じ穴のムジナだからだよ」
響の言葉を遮った誰かの声に、二人が振り向く。
暗い空から、冷たい雨が音を立てて落ちてきた。