DOUBLE STEAL ~イシヲモツモノ~
MISSION 29 ― 雨の夜の誓い ―
「遅いな」
呟いて、窓から外を覗き込む。
商店街の賑やかなネオンが滲んで見える。
いつの間にか外は雨になっていた。
「雨か……」
ソファーに座り、コーヒーカップを手にする。
時計に目をやり、そしてまた直ぐに立ち上がる。
「もう一時……」
千聖はそうやって、いまだに戻らない未央を待っていた。
多少遅くなる事はあっても、これほどまで遅い事は今まで一度として無かったのだから、心配になるのは当然だ。
それに今夜の未央の場合は、友達と遊びに行ったなどというものとは話しが違う。
回収先で手間取っているのか……
それとも――
「行ってみるか……」
鍵を手にして立ち上がる。
その時、ふいにドアがガタンと鳴った。
「未央か?」
問い掛けながら、急いで玄関に向かい鍵を開ける。
「遅かったな、心配――」
言い終わらないうちに勢い良くドアが開き、飛び込んで来たその姿に千聖は目を見張った。
「響……」
ずぶ濡れで顔も服も泥にまみれ、口元には紫色のアザが出来ている。
「千聖っ、てめえっ!」
途端、響は声を上げ千聖に掴みかかった。
千聖は状況が飲み込めぬまま、響の顔を見つめていた。
胸倉を鷲掴みにして、響がグイッと千聖を引き寄せる。
「あんたのせいだぞ!」
「えっ?」
「あんたのせいで未央が――!」
その言葉で、千聖の顔色が変わった。
今度は逆に千聖が響の肩を掴む。
「未央?未央がどうした !?」
「あんたが !!」
「響!未央がどうしたんだ !?」
「あんたのせいで連れて行かれたんだ!神部って男に!」
「神部――」
千聖はクルリと背を向けると、リビングへ向かって歩き出した。