DOUBLE STEAL ~イシヲモツモノ~
「それに、自分の邪魔をする者が居れば、なんの躊躇もなく殺す。―― 確かにそういうタイプに見えた」
「あ……未央はその事に気付いていたんだ。だから俺を助けるために自分から――」
「君と一緒にいて自分から行くと言ったのなら、多分そんなところだろう」
(そうだ、今俺がここに居るのは未央に助けられたからだ。でなきゃナイフを突き付けられたあの時、あの場所で死んでいたかも知れないんだ。未央が助けてくれた。未央が……あっ !!)
しゅんと肩を落とした響がいきなり立ち上がる。
「あいつまさか未央を――!」
「大丈夫、未央はまだ無事だよ。あいつが危ない奴だって事に未央が気付いているなら、変に刺激するような事はしないはずだ。それに未央には役目がある。俺との取り引き材料という大切な役目がね」
「取引って『飼い葉桶の底で待ってる』っていう」
「そうだ」
「それって、何処だか分かったのかよ」
響の質問に首を横に振る。
「いや、まだだ。そして神部の狙いも分からない。いったい何と取り引きするために、未央を連れ去ったのかも。だけど未央は必ず助け出す。どんな事があっても絶対に取り返してみせる」
「千聖……」
窓を叩く雨の音が、一段と強くなる。
両手を握り締めて自分に言い聞かせるように呟いた千聖をじっと見つめる響は、千聖ならどんな不可能も可能にするような気がしていた。
…★……★……★…
☆NEXT☆
「あ、千聖」
「なんだ、響か。教会なんかで何してるんだ?」
「千聖こそ……あ、何だそうか!いやぁ真紀子さん御結婚おめでとうございます。良かったですね」
「ありがとう。これで君も安心でしょ?」
「結婚?誰が?」
「もちろんあなたと私よ。さあ行きましょう」
「千聖、真紀子さんとお幸せに~!」
「て―― 何なんだよっ、この展開っ!」
MISSION 30
― カリスマ牧師の教え ― へ続く。