DOUBLE STEAL ~イシヲモツモノ~
「クリスマス集会?」
「そう。クリスマス集会よ」
久乃は肯いて、響の顔を覗き込んだ。
果物の入ったタッパーから、リンゴを一つフォークに刺して差し出す。
「あんた最近―― っていうか、未央が休みだしてから元気ないじゃない?だからどうかなぁ?とか思って。結構人が集まるし、とにかく話しが面白いのよ。一見は―― ?うぅん、百聞は一見にしかずっていうから。ね、行ってみようよ。予定無いでしょ?」
『未央は、親父さんがクリスマス休暇を取るっていう事で、暫く休むそうです』
響は千聖の部屋に泊まった翌日、学校へ着くなり職員室の担任にそう報告していた。
『警察へ連絡するならそれでもいい。もしそうなったら、俺は自分の知っている事を全て話すから』
あの夜、千聖はそう言った。
『日本の警察は優秀だ。きっと未央を助ける事も出来る』
けれども響はそうしなかった。
警察に報せる?
そんな事をしたら、未央がティンクだとばれてしまう。
千聖だって、コメットだという事が知られて困るはずだ。
いや、千聖の事などどうでもいいのだ。
捕まって島流しになったって張り付けになったって、ガス室に送られたって電気椅子で死刑になったって、知った事じゃない。
でも、未央が犯罪者のレッテルを貼られるのは嫌だった。
それに、あの神部から未央を取り返せるのは千聖だけだ。
根拠など無い。
けれどそんな気がしていた。
「響ってさ、そんな顔もあるんだ」
久乃がリンゴを頬張っていた響を覗き込む。