DOUBLE STEAL ~イシヲモツモノ~

「なんだよそれ。どういう意味だよ?」

「短気で負けず嫌いで、いっつも元気で―― っていうのが響だと思ってた。でも今の響ってなんか違うんだよね。未央が居ないとそんなに淋しい?……私じゃ……代わりになれないかなぁ」

 心持ち俯いたいつもとは全く違う久乃を、響は驚いて見つめた。

「えっ?」

「未央の代わりに……」

「久乃、おまえ……」

 途端に、久乃は慌てて両手を横に振った。

 顔が真っ赤になっている。

「あ―― ち、ちょっと!誤解しないで。そんなんじゃないから。ただ、捨てられた子犬みたいな顔の響、見ていたくないっていうだけなんだから!うん……それだけだから」

 未央を見つめている自分と同じように、自分を見ている人間がいるなんて思っても見なかった。

 響は目の前にいる久乃に自分の姿を見たような気がして、フッと笑った。

 肩を竦めて元気に答える。

「しゃあねえな、行ってやるよ。そのなんとか集会ってやつ」

「よっしゃ!それでこそ響よ。その一日中お日様に干した布団みたいな笑顔じゃなくちゃ」

「なんかひでえ言い方だな」

「そうかな?誉めてるんだけど。とにかく、あとでね!」

 嬉しそうな久乃に、響はまた微笑んだ。



…☆…


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