DOUBLE STEAL ~イシヲモツモノ~

 確かに何処へ行っても、祖父に生き写しだと言われた。

 祖父の若い頃を誰よりも知る、永池秋江にまで言われた。

 でも……でも !!

 祖父と母が?

 そんな事は、到底信じられなかった。

「これで分かっただろう?私がおまえを憎む理由が。おまえを殺して、佐々木隆利の遺産を奪おうとする理由が」

「父さん!」

「私を父と呼ぶな!私とおまえとは、何の繋がりも無いのだから!」

 床に座り込んでいた未央の後ろに、裕一が立ち止まる。

「部屋にあったあのメモも、計画の一部だったっていうのか?」

 裕一は自分を見つめる真っ直ぐな瞳に、視線を合わせた。

「そう……七つの石の宝は、本当は佐々木隆利の遺産だ。彼が息子であるおまえにだけ、与えようとした物。千聖、おまえが自らの手で謎を解き、ここへ辿り着いた時にだけ手に入る宝なのだよ」

 訝しげに眉を顰め、千聖が問い掛ける。

「俺が自ら謎を解く?」

「ああそうだ。養父が亡くなったあと、私は養父がおまえに宛てた遺言書を見た。そこにはこう書かれていた」

 【影の名を呼び頭を捻れば、自ずからその姿現れん。守護者の加護を受けしものに影を捧げ、その背に描かれし所、石の数示せば宝の箱開く】

「そう、あのメモだよ。それともう一つ」

 【千聖が自らこの謎を解いた時にのみ、宝は手に入るだろう】

「私はそれを見て感じたよ。養父がどんなにおまえを愛しているのか。だから、千聖にだけ渡したい物があるのだと。その時の私の気持ちは、今のおまえには想像もつかないだろうな」

 裕一は憎んだ。

 妻・香里を、千聖を、佐々木隆利を。

 そして自分を騙していた者達に、復讐してやろうと心に決めたのだ。

 千聖だけに渡されるはずの遺産を奪い、千聖と香里を殺す。

 その事は、既に死んでしまっていた養父への復讐だった。

 大切な者を奪った事への。



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