DOUBLE STEAL ~イシヲモツモノ~

「千聖!」

 千聖は叫んだ未央にチラリと目をやって、【宝の箱】である金庫の前にしゃがんだ。

 石に纏わる数―― つまり数字はいくつかある。

 そのうちの一つ、カラットは赤峰の屋敷でトラップを解除するのに使った。

 同じ仕掛けが、二度も使われるとは思えない。

 だから、今度は別の数字に違いなかった。

 七つの石のうち、ダイヤモンドを作る元素は炭素で、元素番号6。

 サファイアとルビーは酸化アルミニウムで、アルミニウムの13。

 アメジストは二酸化ケイ素のケイ素から、14。

 エメラルドとアクアマリンは、ベリリウムの4とアルミニウムの13を足して17。

 トパーズが、フッ素の9とアルミニウムの13を足して22。

 そして――

 ダイヤモンドは、四月の誕生石だから4。

 同じようにサファイアは九月、ルビーは七月。

 合わせて16。

 アメジストは二月で2。

 エメラルドは五月、アクアマリンは九月。

 合わせて14。

 トパーズは、十一月だから11。

 この合計数の小さい順から、先の元素番号の合計を並べ――

(最初はこれでいく。もし駄目なら、別の手を考える)

「右14を五回……」

 ダイヤルに刻まれた14という数字が赤い目印の下を四度通り過ぎる。

 そして五度目にその真下へ止まった途端、金庫の扉へ当てた左の掌に微かな振動が伝わった。

(よし、いける!)

「左6を四回……右17三回……左22二回……」

 ダイヤルを回し、次々に解除していく。

 鍵が解けていくのが分かる。

(あと一つ………)

 そこで千聖は一旦手を止めた。



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