DOUBLE STEAL ~イシヲモツモノ~

 暗い空を横切る中野大橋が見える。

 近付いてくる。

 さっきの爆発音が聞こえたのか、橋の上には多くの人だかりが出来ていた。

 いつもなら、車の中で二人の世界を楽しんでいるカップルたちだ。

 四発目が爆発するまでに間に合うか?

 もしも間に合わなかったら――?

 自らに問い掛けながら、未央に目を遣る。

 たとえ爆発を避けられても、冷たい海に投げ出されたら――?

 千聖は寒さに震える未央の肩を抱くと、ゆっくりと顔を近付けた。

「千聖?」

 深く長く口づける――

 それからじっと見つめて、風に靡く髪を掻き上げた。

「恐いか?」

 未央が微笑んで首を横に振る。

「ううん、平気。だって千聖、必ず助けるって言ってくれたもん。私、信じてるもん」

 そう――

 悪い結果など考えるな。

 立ち止まるな、前へ進むんだ。

 必ず未央を助けると、心に決めたのだから。

 心の中で呟き、未央に微笑む。

「デートの約束も忘れるなよ」

「うん」

 足元からも黒煙が噴出し始め、視界を遮る。

 千聖は片手で未央を抱き寄せると、中野大橋の方へ視線を向けた。

(頼む、見えてくれ!)

 その時、突然強い風が駆け抜けた。

 海面が白く波立つ。

 煙がちぎれ飛ぶ。

 ほぼ同時に、クレイドル号が橋に差し掛かる。

 一瞬開けた視界に光る物を見付け、千聖は声を上げた。

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