DOUBLE STEAL ~イシヲモツモノ~
「よし!間に合った!」
次の瞬間、千聖は片腕に未央を抱えたまま、暗い空間にもう一方の手を伸ばし身を躍らせた。
フワリと身体が浮き、クレイドル号が遠離る。
そのまま真っ直ぐに橋に向かって登って行く。
欄干を越えて二人が歩道に転がり込んだとほぼ同時に、さっきまでとは比べ物にならない大きな爆発音がした。
橋の下を潜り抜け、僅かに沖に向かって進んだ所で、クレイドル号が真っ赤な炎を噴き出し辺りを染め上げている。
船体が沈んでいく――
「父さん……秋江さん……」
思わず呟いた千聖を、未央はじっと見つめた。
「千聖……」
「大丈夫だ。俺には未央が居るから」
その言葉に微笑んで、未央は千聖の胸にしっかりとしがみついた。
「うん……ずっとずっと傍に居るよ」