DOUBLE STEAL ~イシヲモツモノ~
「まさか……ほら、予約……」
少し頬を染めた未央に、ハッと気付く。
「……あ……馬鹿――」
千聖は顔を背け、頭を掻いた。
「そんなわけ無いだろ」
「だよね……。良かった」
「あたりまえだ」
(ホテルの方は解約だよ。せっかく一泊二十五万のロイヤルスイートを、苦労して取ったのに)
千聖がフウッと溜め息をつくと、未央はペロリと舌を出して肩を竦めた。
「なんだよ?二人だけで了解しちゃって、面白く無ぇ――」
「い、いいから響、行きましょう」
未央は響の言葉を遮り、腕を引っ張った。
「行って来まぁす」
手を振って玄関に向かう。
とその時、ふいにドアチャイムが鳴った。
急いで駆け寄った未央がドアを開ける。
「誰かしら―― あっ」
途端、未央は唖然として、目を見開いた。
今にも飛び込んで来そうな感じで、女性が二人立っていたのだ。
「こんにちは」
「御邪魔いたします」
片方は一度会ったので知っている。
真紀子だ。
「真紀子さん……と……?」
もう一人の知らない女性を見る。
長い髪の、グラマーな美人だ。
真紀子と一緒に来たのだからその女性も関東日報の記者なのかと一瞬考えたが、どうにも雰囲気が違う。
身に着けているものが、いかにも高級そうなのだ。
未央は少し首を傾げて問い掛けた。
「どなたですか?」
「初めまして。私、米村瞳と申します。あなたは?」
問い返されて、未央が答える。
「私ですか?私は小野寺未央です。初めまして」
「千聖さんとは、どういった関係でいらっしゃるの?」
瞳は未央を訝しげに見た。
その視線に、未央は思わず言葉に詰まった。
「何だよ未央。誰?」
しかし後ろから顔を出した響を見た途端、瞳は急に態度を変えた。