DOUBLE STEAL ~イシヲモツモノ~
今度はうつむき加減で続ける。
「何処にいたんだよ。何してたんだよ。二日間も誰といたんだよ。俺には……嘘吐くなよな」
「分かってる。ちゃんとホントの事言うよ。あのね――」
未央は、体育館の一段高くなっている裏口のところに腰を下ろして話し始めた。
「あのね、私、金曜の夜、帰る途中で変な人に追い掛けられて――」
「えっ……」
途端に響が未央に目をやる。
未央は慌てて顔の前で両手を横に振った。
「ああ、でも心配しないで。別に何でもなかったから。その時ね、ある人が助けてくれたの。で、家に帰ると一人だし、外に出るのも恐くて。それでずっとその人のマンションに居たの」
「そうか……」
ホッと溜め息をつく。
それから響は唇を噛んだ。
「ごめん。俺がいけなかったんだ。ちゃんと家まで送らなかったから、だからおまえをそんな恐い目に――」
「そんな事無いよ、響のせいじゃない。送らなくていいって言ったの私だし、それに寄り道なんかしたからいけなかったのよ」
「寄り道?」
「あ……うん、ちょっとコンビニにね」
じつは回収の仕事に行って―― 等と、本当のホントの事を言う訳にもいかないので、未央は言葉を濁した。
「それで今日はどうするんだ?家に戻るのか?それともまだその助けてくれた人の所に行くのか?」
「一度家に戻って必要な物纏めて、千聖の所に行くわ」
「千聖?その人千聖って言うのか」
未央は肯いた。
「何の仕事してる人なんだ?ちゃんとした人なのか?信用できるのか?」
肩を掴んで顔を覗き込んだ響の顔をじっと見る。
それに気付いて、響は慌てて手を離した。
心なしか頬がポッと赤くなった。
「な、何?じっと見て……」
「だって響、さっきから質問ばっかり」
「あ……ごめん」
「いいよ。だってそれって私のこと心配してくれてるからなんだよね。ありがとう」
頭を掻いている響に、未央は少し口角を上げた。