DOUBLE STEAL ~イシヲモツモノ~
「響、映画ちゃんと見てたの?」

 訊かれて頭を掻く。

 未央の真っ直ぐな眼差しに、響は落ち着き無く視線を泳がせた。

「見てたと思うけど……その―― おまえの顔を」

「何で私の顔なんか。いつも学校で見てるじゃない」

「さあ……」

「変な響」

 未央が肩を竦めてクスッと笑う。

 その笑顔に、響の心臓はまた大きく跳ねた。

「でも……なんかさ、映画館の椅子って疲れるよな。窮屈で」

 話しながら伸びをして、それとなく未央の肩に手を回す。

 左手が無事に未央の肩に到着して、響はホッと溜め息をついた。

 一応許可はもらっていたものの、何か言われないかとドキドキしていたのだ。

 そんな不安を打ち消そうとすぐに別の話題を振ってみる。
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