DOUBLE STEAL ~イシヲモツモノ~
「ごめんよ。一緒に遊んでいたいけど、仕事なんだ。機会があったらまた遊ぼう」
それから月明かりだけの中で辺りを見回す。
壁際の飾り棚の上に、まるで見せびらかすように置かれていたそれはすぐに見付かった。
『その石ね、白雪姫みたいに分厚いガラスの箱に入ってた』
「なにしろ【プリンセス・スノーホワイト】だからな」
未央の言葉を思い出してフッと笑う。
それはガラスの箱というより、大きなガラスの塊に少しの空洞を開け、そこに石を入れたと言った方がピッタリだった。
そしておそらく相当な重さがあり、一人で持ち上げるにはかなり苦労する―― いや、無理かもしれなかった。
にしても、あまりにも無防備にさらけ出されたそれに、千聖は軽く眉を上げた。
少しの間眺めてから、今度は目を細める。
ふいにさっきからずっと足下にすり寄っていた猫に目をやった。
「そうだ、一緒に遊べないお詫びにいい物をあげよう」
ポケットから何かを取り出し、掌に乗せて猫に見せた。
「ここに置いておくからね」
優しく告げて、それを棚の上に置く。
それからおもむろに手を伸ばし、千聖は力を入れて重たいガラスの箱をずらした。
途端に足下でガタンと音がして、一瞬のうちにポッカリと大きな暗闇が広がる。
ゴゥ―― と風が吹き上げて来る。
それとほぼ同時に、千聖の身体はその真っ黒な穴に吸い込まれた。
それから月明かりだけの中で辺りを見回す。
壁際の飾り棚の上に、まるで見せびらかすように置かれていたそれはすぐに見付かった。
『その石ね、白雪姫みたいに分厚いガラスの箱に入ってた』
「なにしろ【プリンセス・スノーホワイト】だからな」
未央の言葉を思い出してフッと笑う。
それはガラスの箱というより、大きなガラスの塊に少しの空洞を開け、そこに石を入れたと言った方がピッタリだった。
そしておそらく相当な重さがあり、一人で持ち上げるにはかなり苦労する―― いや、無理かもしれなかった。
にしても、あまりにも無防備にさらけ出されたそれに、千聖は軽く眉を上げた。
少しの間眺めてから、今度は目を細める。
ふいにさっきからずっと足下にすり寄っていた猫に目をやった。
「そうだ、一緒に遊べないお詫びにいい物をあげよう」
ポケットから何かを取り出し、掌に乗せて猫に見せた。
「ここに置いておくからね」
優しく告げて、それを棚の上に置く。
それからおもむろに手を伸ばし、千聖は力を入れて重たいガラスの箱をずらした。
途端に足下でガタンと音がして、一瞬のうちにポッカリと大きな暗闇が広がる。
ゴゥ―― と風が吹き上げて来る。
それとほぼ同時に、千聖の身体はその真っ黒な穴に吸い込まれた。