DOUBLE STEAL ~イシヲモツモノ~
「何だ?―― ビー玉じゃないか。何でこんな所に――」
呟きながら米村が【プリンセス・スノーホワイト】を手に取ったその時だった。
ニャォオンと鳴いて、白い塊が棚の上に飛び上がった。
そのままビー玉を追い掛けて米村の腕を飛び越える。
「ああっ!」
その瞬間、米村は声を上げた。
猫の爪が米村の服の袖に引っかかり、思わぬ反動で【プリンセス・スノーホワイト】がその手から滑り落ちたのだ。
「石が!」
慌てて掴もうとする手を潜り抜けた【プリンセス・スノーホワイト】は、まるで米村を嘲笑うかのように、さっき千聖が落ちたのと同じ穴に真っ直ぐに吸い込まれて行った。
「ああ!なんて事だ」
「ドジが。穴を閉じてからやれば良かったんだ」
「仕方ないだろう!穴は地下室に行かないと閉じられないし、それに石の事が気になったんだから!クソッ!この猫め!」
米村は馬鹿にしたように嗤った神部を、真っ青になって怒鳴った。
猫は米村の怒りも意に介さないようで、ビー玉を手に入れて満足そうに遊んでいる。
「傷ついていたりしなければいいんだが。―― 神部、あんたも一緒に来てくれ」
「全く世話の焼ける奴だ」
肩を竦め、部屋を出て行く米村の後に続く。
ドアを閉めようとしてもう一度穴に目をやり、神部は「傷付かないように誰かが受け止めていてくれるといいんだがな」と呟いてフッと笑った。