DOUBLE STEAL ~イシヲモツモノ~
表紙に『一年二組たにぐちゆうこ』と書かれている。
小学生の時に未央も使った事のある、いわゆるお絵描き帳だ。
パラパラとページを捲り、祐子は一枚の絵を指さした。
「これがそうよ。私は小さい頃からデザイナーになりたくて、よくこういう絵を描いていたわ。そして一番の自信作がこれ」
祐子は懐かしそうに微笑んだ。
それは、まるで絵本の中のお姫様が身に付けているような沢山のリボンとフリルとそして色とりどりの花に飾られた、まさにメルヘンチックなドレスだった。
きっとどんなに頭を絞っても、大人にはデザインすることは出来ない。
子供の純粋な心だからこそ描くことが出来た物。
素人の未央でさえそんな気がした。
「大人になってデザインの勉強を始めたわけなんだけど、今度ウエディングドレスのコンクールに作品を出品する事になって、この絵のことを思い出したの。ノートを捜し出してこれを見た瞬間、これしかないと思ったわ」
「それが何故他の人の手に?」
未央の質問に祐子は少し淋しそうに微笑んだ。
「この絵を見せたのよ。友だち―― 田舎から出て来てからずっと仲良くしていた親友に。彼女も同じ会社で働いていて、コンクールには二人で相談してそれぞれ出品する事にしたの。ああでもないこうでもないって二人で毎晩デザインを考えたわ。ある晩子供の頃の話しになって、私はこのノートを見せた。ほんの軽い気持ちだった。だけど――」
祐子は大きく溜め息を吐いた。
翌日から友人は会社に来なくなった。
それどころか、外で会っても裕子を避けるようになった。
裕子は不思議で仕方なかった。
何か彼女の気にさわるような事をしたのではないかと、気になって仕方なかった。
そこである日、思い切って彼女を呼び出して訊いてみたのだ。
小学生の時に未央も使った事のある、いわゆるお絵描き帳だ。
パラパラとページを捲り、祐子は一枚の絵を指さした。
「これがそうよ。私は小さい頃からデザイナーになりたくて、よくこういう絵を描いていたわ。そして一番の自信作がこれ」
祐子は懐かしそうに微笑んだ。
それは、まるで絵本の中のお姫様が身に付けているような沢山のリボンとフリルとそして色とりどりの花に飾られた、まさにメルヘンチックなドレスだった。
きっとどんなに頭を絞っても、大人にはデザインすることは出来ない。
子供の純粋な心だからこそ描くことが出来た物。
素人の未央でさえそんな気がした。
「大人になってデザインの勉強を始めたわけなんだけど、今度ウエディングドレスのコンクールに作品を出品する事になって、この絵のことを思い出したの。ノートを捜し出してこれを見た瞬間、これしかないと思ったわ」
「それが何故他の人の手に?」
未央の質問に祐子は少し淋しそうに微笑んだ。
「この絵を見せたのよ。友だち―― 田舎から出て来てからずっと仲良くしていた親友に。彼女も同じ会社で働いていて、コンクールには二人で相談してそれぞれ出品する事にしたの。ああでもないこうでもないって二人で毎晩デザインを考えたわ。ある晩子供の頃の話しになって、私はこのノートを見せた。ほんの軽い気持ちだった。だけど――」
祐子は大きく溜め息を吐いた。
翌日から友人は会社に来なくなった。
それどころか、外で会っても裕子を避けるようになった。
裕子は不思議で仕方なかった。
何か彼女の気にさわるような事をしたのではないかと、気になって仕方なかった。
そこである日、思い切って彼女を呼び出して訊いてみたのだ。