DOUBLE STEAL ~イシヲモツモノ~



「うぅぅ~ん……」

 大きく伸びをして、寝室からキッチンへ向かう。

 未央は祐子の依頼を受けてから、ずっと考えていた。

 回収するのはコンクールの当日。

 場所は会場内、その方法も決まった。

 だが――

 家から持って来たマグカップにミルクを注ぎ、レンジに入れる。

 チンと音がして湯気が立ち上ったカップを持つと、未央はキッチンを出た。

「フゥ……問題は回収したあとよね。どうしよう」

 カップに目をやりながら一歩ずつゆっくりと歩く。

「ドレスか……あんなフリルやレースやリボンで嵩張る物、初めてだし……」

「嵩張るなら小さく畳めばいい」

「そうか、そうよね。でもどうやって……えっ?―― きゃっ!」

 突然の声に、未央は思わず手にしていたカップをポロリと落とした。

 しまった!と思った時には、カップは既に空中でゆっくりと傾いていて――

 飛び出した熱いミルクは、避ける間も無くアッという間にジーンズに染み込んでしまった。

「熱ぃいいっっ!」


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