DOUBLE STEAL ~イシヲモツモノ~
「悪かったな。急に声掛けて驚かせて。―― 考え事してたんだろ?」
「えっ?―― うん。ちょっとね」
未央は、床に膝をついて包帯を巻いている千聖をじっと見つめた。
『あいつの両親な――』
響の言葉がふと頭を過ぎる。
「千聖」
「ん?」
「ごめんね」
「何だよ急に」
「ここに居座っちゃって」
「そう思うなら、一日でも早く出て行って欲しいもんだな」
巻き終えた包帯を絆創膏で止め、救急箱に薬を片付けている千聖を見て、未央は複雑な笑みを浮かべた。
「そう言うと思った」
救急箱を手にした千聖が部屋の隅の棚へ向かうのを見送り、未央は包帯を巻かれた足をそっと撫でながら続けた。
「私だって、一人暮らししてる男の人の家に、女の子が押し掛けるなんて変だと思うよ」
「分かってたら何故ここに居る?」
「でもね!でも………うまく言えないけど、『助けてもらってありがとうございました、それじゃあさようなら』なんて別れちゃいけない気がしたの。あの晩出会ったのはただの偶然じゃなくて……何か……何か理由があるんだって」
千聖は一旦キッチンへ入り何かしていたが、やがてコーヒーカップを手に戻ってきた。
「理由があって出会った?まるで御伽噺だ」
向かい側のソファーに腰を下ろし煙草を取り出すと、千聖は肩を竦めた。
「だから催眠ガスで眠らせて強引に泊まったって言うのか?何考えてるんだ。全然わけが分からな――」
「千聖を独りぼっちにしちゃいけない、そのために出会った気がして!」
煙草に火を付けかけていた手を止めて、千聖は声を上げた未央を真っ直ぐに見た。
「何故そう思った?」
「―― 淋しそうだったから」
未央も目を逸らさずに答えた。
ライターの火を消して、煙草をポケットに戻す。
それから千聖は膝の上に肘を付いて、組んだ両手に額を押し当てた。
「えっ?―― うん。ちょっとね」
未央は、床に膝をついて包帯を巻いている千聖をじっと見つめた。
『あいつの両親な――』
響の言葉がふと頭を過ぎる。
「千聖」
「ん?」
「ごめんね」
「何だよ急に」
「ここに居座っちゃって」
「そう思うなら、一日でも早く出て行って欲しいもんだな」
巻き終えた包帯を絆創膏で止め、救急箱に薬を片付けている千聖を見て、未央は複雑な笑みを浮かべた。
「そう言うと思った」
救急箱を手にした千聖が部屋の隅の棚へ向かうのを見送り、未央は包帯を巻かれた足をそっと撫でながら続けた。
「私だって、一人暮らししてる男の人の家に、女の子が押し掛けるなんて変だと思うよ」
「分かってたら何故ここに居る?」
「でもね!でも………うまく言えないけど、『助けてもらってありがとうございました、それじゃあさようなら』なんて別れちゃいけない気がしたの。あの晩出会ったのはただの偶然じゃなくて……何か……何か理由があるんだって」
千聖は一旦キッチンへ入り何かしていたが、やがてコーヒーカップを手に戻ってきた。
「理由があって出会った?まるで御伽噺だ」
向かい側のソファーに腰を下ろし煙草を取り出すと、千聖は肩を竦めた。
「だから催眠ガスで眠らせて強引に泊まったって言うのか?何考えてるんだ。全然わけが分からな――」
「千聖を独りぼっちにしちゃいけない、そのために出会った気がして!」
煙草に火を付けかけていた手を止めて、千聖は声を上げた未央を真っ直ぐに見た。
「何故そう思った?」
「―― 淋しそうだったから」
未央も目を逸らさずに答えた。
ライターの火を消して、煙草をポケットに戻す。
それから千聖は膝の上に肘を付いて、組んだ両手に額を押し当てた。