DOUBLE STEAL ~イシヲモツモノ~
MISSION 4 ― 千聖と響 ―
「なんだ。ここのマンションか」
響はスポーツバッグいっぱいに詰めた未央の荷物を肩に掛けたまま、建物を見上げた。
時間は夜の十時を過ぎていた。
授業が終わった後、真っ直ぐに未央の家へ荷物を取りに行ったのだが――
「あれ?あの服何処に行っちゃったんだろ?ここにしまったと思ったのに……響、ちょっと捜してくれる?ピンクのTシャツ」
「俺が捜すの?」
「そう。その辺りの引き出しにあると思うから」
「ったく――。あ……パン………」
開けた引き出しの中に並んでいる色とりどりの小さな布に、響が真っ赤になる。
「そうだ、パジャマも持って行かなくちゃ。下着もいるし―― あ!響、そこは見ちゃ駄目!エッチ!もうあっち行ってて」
振り向いた未央は、完全に固まっている響を慌てて押し退けた。
「あのな……おまえが捜してくれって言ったんだろう?」
もちろん自分の家にだって、女性用の下着はある。
姉なんて、風呂上りに下着だけで部屋をうろうろしている事もある。
けれど母親や姉のそれは、普通に目にする言わば壁に掛かったカレンダーのような物だ。
他の女性の物とは違うのだ。
ましてや未央の物となれば……
響はニヤつきそうな口元を隠すために、引き出しに背を向けて頭を掻いた。
「あと、歯ブラシと……ねぇ、シャンプーとかも持って行った方がいいかな?あとボディソープ」
「そんなモノどうでもいいよ!修学旅行やキャンプじゃないんだから」
「でもいるかも知れないでしょ?」
「だったら持って行けばいいじゃん」
「あ、でも荷物いっぱいになっちゃうか……」
「じゃあ止めればいいだろ」
「だけど……」
そんな感じで――
気が付いたらこんなに遅くなっていたのだ。