DOUBLE STEAL ~イシヲモツモノ~
「響ここ知ってるの?」
枕を抱えた未央が、隣に居る響の顔を見上げる。
響は上を向いたまま答えた。
「ああ、知ってるも何も―― 俺んち今の一戸建てに引っ越す前、ここに居たんだよ」
「そうなんだ。全然知らなかった」
「引っ越したのは俺が中一の時だから、五年くらい前かな」
「ふぅん。ね、何号室?」
「505」
「えっ !?」
未央は驚いた顔で、マンションの窓を指で追っている響を見た。
「501、502、503とあって次が何故505なのか不思議だったから良く覚えてるよ。な、その千聖って奴の部屋は?」
「503」
「えっ !?」
今度は響が目を丸くして未央を見た。
「503って―― もしかして向坂っていう?」
「そうよ、言言わなかったっけ?向坂千聖っていうんだって」
「そうだっけ?ま、いいや。でも……まだここに居たのか」
響は懐かしそうに呟いた。
その言葉尻を捕らえて未央が尋ねる。
「ね、『まだここに居たのか』ってどういう意味なの?」
「おまえあいつから訊いてないの?」
「何を?」
「『何を』って――」
響は『千聖は自分の事は何も話してくれないの』と言った未央の言葉を思い出した。
(本人が話さない事を、第三者の俺が勝手に話していいのか?やっぱマズイよな。それに……)
考えて頭を掻く。
それに――
話しを聞いたら、未央はきっと千聖に同情するだろう。
そして今よりもっと心を惹き付けられるに違いなかった。
ハンデは少ない方がいいに決まっている。
響はヨイショッと鞄を抱え直すと、マンションに向かって歩き出した。
「やっぱ知りたかったら本人に訊いた方がいいよ。俺が話すべき事じゃないし」
「なぁんだ。つまんないの。千聖の秘密が一つ分かると思ったのにな」
未央は口を尖らせた。
枕を抱えた未央が、隣に居る響の顔を見上げる。
響は上を向いたまま答えた。
「ああ、知ってるも何も―― 俺んち今の一戸建てに引っ越す前、ここに居たんだよ」
「そうなんだ。全然知らなかった」
「引っ越したのは俺が中一の時だから、五年くらい前かな」
「ふぅん。ね、何号室?」
「505」
「えっ !?」
未央は驚いた顔で、マンションの窓を指で追っている響を見た。
「501、502、503とあって次が何故505なのか不思議だったから良く覚えてるよ。な、その千聖って奴の部屋は?」
「503」
「えっ !?」
今度は響が目を丸くして未央を見た。
「503って―― もしかして向坂っていう?」
「そうよ、言言わなかったっけ?向坂千聖っていうんだって」
「そうだっけ?ま、いいや。でも……まだここに居たのか」
響は懐かしそうに呟いた。
その言葉尻を捕らえて未央が尋ねる。
「ね、『まだここに居たのか』ってどういう意味なの?」
「おまえあいつから訊いてないの?」
「何を?」
「『何を』って――」
響は『千聖は自分の事は何も話してくれないの』と言った未央の言葉を思い出した。
(本人が話さない事を、第三者の俺が勝手に話していいのか?やっぱマズイよな。それに……)
考えて頭を掻く。
それに――
話しを聞いたら、未央はきっと千聖に同情するだろう。
そして今よりもっと心を惹き付けられるに違いなかった。
ハンデは少ない方がいいに決まっている。
響はヨイショッと鞄を抱え直すと、マンションに向かって歩き出した。
「やっぱ知りたかったら本人に訊いた方がいいよ。俺が話すべき事じゃないし」
「なぁんだ。つまんないの。千聖の秘密が一つ分かると思ったのにな」
未央は口を尖らせた。