DOUBLE STEAL ~イシヲモツモノ~
 ドアロック防止用のプラスチックを外して、自動ロックを作動させる。

 エレベーターに戻ってドアの開放を解除、何食わぬ顔で披露宴会場に向かった。

「クロスもらって来ました」

「御苦労様、早かったわね。あら?」

 係りの人の反応に一瞬ドキッとする。

「あの……何か?」

「数が多いみたいね。ま、いいわ。残ったらあなた下に持って行ってくれる?」

「はい」

 未央はまた元気良く返事をした。

(フゥ……さすがプロね。ちょっと見ただけで枚数が分かるなんて)

 係りの人の言ったとおり、クロスは未央が余分に持って来た五枚ほどが余った。

 万が一ドレスを身体に巻く事が上手くいかなかった時、そこへ挟んでおこうと思って持ってきたのだ。

 結果は必要なかったが――

「じゃあ私、これ返してから次の仕事に移ります」

「分かったわ。じゃあお願いね。ご苦労様」

 丁寧にお辞儀をして、未央は披露宴会場をあとにした。

 エレベーターに乗り、リネン室に向かう。

 二階に停まると、カートを押して外へ出た。

(何かちょっと動きにくいかな。でも昼休みまでだから少しの辛抱だわ。コンクールが始まるのは六時。出品者が来るのはいくら早くても三時くらい。昼休みの間に処理すればOKね)

「すみませ~ん」

 リネン室を覗き込んで声をかける。

「これ余っちゃったのでお返ししておきます。じゃあ――」

「あ、ちょっと!」

 途端に、その場を去ろうとした未央を中に居た人が呼び止めた。

「あなた手空いてる?」

「ええ。空いてますけど」

「じゃあこのクロスを、四階のクリスタルの間に持って行ってくれるかしら?足りなくなっちゃったっていうから」

「分かりました。クリスタルの間ですね」

 肯いてクロスを受け取り、今度は階段で四階へ向かった。

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