DOUBLE STEAL ~イシヲモツモノ~
「ここに居るんだろう?回収屋さん」
(この男、知っていたんだ。知っていて警備員を追い払った。どうして?どうしてなの?)
未央はゴクリと唾を飲んだ。
疑問で頭がいっぱいになった未央を他所に、何故か男は明かりをつけずに話し続ける。
「この部屋には出入り口は一つ。おまけに人間が潜り込めるような排気口なども無い。俺はあんたがここへ入ってからずっとドアの外に居た。だからあんたがここに居ることは分かってるんだ」
未央は一瞬耳を疑った。
落ち着いて聞いてみると、男の声や話し方が千聖にそっくりだったからだ。
そして、『見ていた』というのは本当なのだろう。
全く答えが無いにも関わらず、男はなおも続けた。
「俺はあんたを警察に売る気はない。話しを聞かせてくれればそれでいい。どうせ大した話しじゃないだろうけど」
(何ですって――!)
「痛っ……」
男の言葉に思わず立ち上がろうとして、未央は足首を押さえた。
ズキンズキンと疼く足首は、熱を持って腫れてきている。
こんな足ではこの男からも、そしてこの建物の中に大勢いる警備員からも逃げる事は不可能だと思われた。
男がまた話し掛けてくる。
「話しを聞かせてくれ。何故こんな事をしているのか」
「どうして見ず知らずのあなたに、私の事情を話さなくちゃならないの?」
未央は思いきって答えた。
「やっと話してくれる気になったか」
男はフッと笑った。
「見ず知らず―― か。それじゃあ自己紹介しよう。もちろんあんたはしなくていい。俺は関東日報の記者で――」
シュッと音がして、男の手元にポッと灯りがともった。
ライターの炎に浮かび上がった男の顔。
それは――
「向坂千聖だ」
その言葉を聴かずとも直ぐに分かった。
(千聖!やっぱり千聖だ。記者?関東日報の?そうか……千聖、新聞記者だったんだ)
未央は少し安心したと同時に心配になった。
(この男、知っていたんだ。知っていて警備員を追い払った。どうして?どうしてなの?)
未央はゴクリと唾を飲んだ。
疑問で頭がいっぱいになった未央を他所に、何故か男は明かりをつけずに話し続ける。
「この部屋には出入り口は一つ。おまけに人間が潜り込めるような排気口なども無い。俺はあんたがここへ入ってからずっとドアの外に居た。だからあんたがここに居ることは分かってるんだ」
未央は一瞬耳を疑った。
落ち着いて聞いてみると、男の声や話し方が千聖にそっくりだったからだ。
そして、『見ていた』というのは本当なのだろう。
全く答えが無いにも関わらず、男はなおも続けた。
「俺はあんたを警察に売る気はない。話しを聞かせてくれればそれでいい。どうせ大した話しじゃないだろうけど」
(何ですって――!)
「痛っ……」
男の言葉に思わず立ち上がろうとして、未央は足首を押さえた。
ズキンズキンと疼く足首は、熱を持って腫れてきている。
こんな足ではこの男からも、そしてこの建物の中に大勢いる警備員からも逃げる事は不可能だと思われた。
男がまた話し掛けてくる。
「話しを聞かせてくれ。何故こんな事をしているのか」
「どうして見ず知らずのあなたに、私の事情を話さなくちゃならないの?」
未央は思いきって答えた。
「やっと話してくれる気になったか」
男はフッと笑った。
「見ず知らず―― か。それじゃあ自己紹介しよう。もちろんあんたはしなくていい。俺は関東日報の記者で――」
シュッと音がして、男の手元にポッと灯りがともった。
ライターの炎に浮かび上がった男の顔。
それは――
「向坂千聖だ」
その言葉を聴かずとも直ぐに分かった。
(千聖!やっぱり千聖だ。記者?関東日報の?そうか……千聖、新聞記者だったんだ)
未央は少し安心したと同時に心配になった。