DOUBLE STEAL ~イシヲモツモノ~
理由はともあれ持ち主に断りも無く持ち出せば、立派な窃盗なのだから。
「でも盗まれた大切な物や、騙されて取り上げられた物を取り返すのもいけないなんて何か変……。今はそう思ってこの仕事続けてるの。それに、こうしていればいつか自分の捜している物も見付かるような気がして……。理由はこんなのかな」
話し終えてフゥッと溜め息をついた。
黙って聞いていた千聖が口を開く。
「取り戻したい物―― か。あんたの取り戻したい物って何なんだ?」
(千聖が私に質問するなんて。いつも『他人の事なんて興味ない』って言ってる癖に)
思わず普段の千聖が浮かんで、未央はフッと笑った。
「何がおかしいんだ?」
「だっていつも――」
慌てて口を押さえる。
少し考えて、未央は別の言葉を口にした。
「―― そんな事まで訊かれるとは思わなかったから」
「フッ……俺は記者なんだ。当然だろ?」
今度は千聖が笑った。
気を取り直して続ける。
「私ね、絵を捜しているの」
「絵?」
「そう。画家だったパパが描いた絵よ。それね、パパの親友っていう人が凄く気に入ってくれて、その人の家に飾っていたの」
しかし、未央の父とその親友が事故で一緒に亡くなり、その後母親が病気でこの世を去り、絵は何処にあるのか分からなくなった。
そしてそのまま月日が経ち――
「あの絵は二人の形見。二人が私を愛してくれていた証なの。だから――」
未央は懐かしむように微笑んだ。
「そうか……。それが見付かるまで仕事を続けるつもりなのか?」
「ええ、そのつもり。でも私ドジだから今日みたいな事になって、そのうち捕まっちゃうかもね」
よく考えてみれば、今日まで何も―― 千聖に出会ったあの日は別として、それまで何も無かったのは奇跡だったのかもしれない。
実際そう思えて大きく溜め息を吐いた。
「でも盗まれた大切な物や、騙されて取り上げられた物を取り返すのもいけないなんて何か変……。今はそう思ってこの仕事続けてるの。それに、こうしていればいつか自分の捜している物も見付かるような気がして……。理由はこんなのかな」
話し終えてフゥッと溜め息をついた。
黙って聞いていた千聖が口を開く。
「取り戻したい物―― か。あんたの取り戻したい物って何なんだ?」
(千聖が私に質問するなんて。いつも『他人の事なんて興味ない』って言ってる癖に)
思わず普段の千聖が浮かんで、未央はフッと笑った。
「何がおかしいんだ?」
「だっていつも――」
慌てて口を押さえる。
少し考えて、未央は別の言葉を口にした。
「―― そんな事まで訊かれるとは思わなかったから」
「フッ……俺は記者なんだ。当然だろ?」
今度は千聖が笑った。
気を取り直して続ける。
「私ね、絵を捜しているの」
「絵?」
「そう。画家だったパパが描いた絵よ。それね、パパの親友っていう人が凄く気に入ってくれて、その人の家に飾っていたの」
しかし、未央の父とその親友が事故で一緒に亡くなり、その後母親が病気でこの世を去り、絵は何処にあるのか分からなくなった。
そしてそのまま月日が経ち――
「あの絵は二人の形見。二人が私を愛してくれていた証なの。だから――」
未央は懐かしむように微笑んだ。
「そうか……。それが見付かるまで仕事を続けるつもりなのか?」
「ええ、そのつもり。でも私ドジだから今日みたいな事になって、そのうち捕まっちゃうかもね」
よく考えてみれば、今日まで何も―― 千聖に出会ったあの日は別として、それまで何も無かったのは奇跡だったのかもしれない。
実際そう思えて大きく溜め息を吐いた。