DOUBLE STEAL ~イシヲモツモノ~
 響を置き去りにして公園を飛び出した未央は、真っ直ぐ駅へ向かった。

 計画実行まであと三十分。

 それまでに準備をして目的地へ行かなくてはならない。

「急がなきゃ」

 コインロッカーからスポーツバッグを取り出して、トイレに駆け込む。

 すぐに個室に飛び込んで着替え始めた。

「全く―― なんで駅のトイレってこう汚いのかしら。もっとキレイに使って欲しいもんだわ。着替えにくくってしょうが無いじゃない」

 人が聞いたら「そこは着替える所じゃない」とツッコミを入れそうな文句を言いながら、水色のワンピースから黒っぽいTシャツとスパッツに着替えを済ませて外へ出る。

 もう一度コインロッカーへ戻りスポーツバッグを放り込むと、小さなリュックから特製のローラースケートを取り出した。

 足を乗せカチッと固定する。

「よっし!あと二十五分」

 未央は気合いを入れて夜の街へ滑り出した。

 スイスイと人混みを抜けて渋滞している車を追い越し、ポニーテールを揺らしながら進んで行く。

 やがて閑静な住宅街の一画に着くと、広い庭のある屋敷の前に止まった。
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