DOUBLE STEAL ~イシヲモツモノ~
「これ……洗剤の匂い?」
「そう。ここは汚れてしまった衣装のためのクリーニングルームさ。洗濯機、乾燥機はもちろん、洗剤、染み抜き用の薬品、そして布を染めるための染料も置いてある。まるで使ってくださいと言っているように」
「あなたどうしてそんな事知ってるの?ここの部屋の前には何の表示も無かったし、部屋の明かりだって一度も付けていないわ」
当然のように沸く疑問。
それを投げ掛けられ、千聖はフッと笑った。
「あったじゃないか、一度だけ部屋の中が明るくなった時が。その時に見たんだよ。全てね」
それはきっと千聖がドアを開けた時の事だと思われた。
でも廊下の光が差し込んだのはほんの一瞬だった。
(あんな短い間に部屋の中を見渡した?―― 嘘だ)
そう思った瞬間、また声がした。
「それに暗くたって少しは見える。疑わしそうに俺を見ているあんたの顔だって分かるぜ」
「えっ――」
未央は思わず顔を背け、手で覆った。
「顔だけじゃない。他の事だって―― さっき見たところでは身長は高くもなく低くもなかった。いや、比較的小柄な方だ。体脂肪率は低く筋肉質。したがって、身軽で運動神経には自信があるだろう。そして、年齢のわりに胸が小さい」
「な――!ちょっと――」
聞き捨てなら無い台詞に立ち上がろうとしたが、足首が痛んで未央はまたうずくまった。
短い抗議の声は耳に届かなかったようで、千聖はさらに続けた。
「順序立てて物事を考えるより、閃きにしたがって行動する方だ。甘えん坊で淋しがり。いまだにお伽話を信じているような、ちょっと優しくするとすぐついて来るナンパしやすいタイプ」
「いい加減にして!黙って聞いてれば勝手なこと言っちゃって!」
千聖の言葉にだんだん腹が立ってきて、未央は座ったまま大きな声をあげた。
「そう。ここは汚れてしまった衣装のためのクリーニングルームさ。洗濯機、乾燥機はもちろん、洗剤、染み抜き用の薬品、そして布を染めるための染料も置いてある。まるで使ってくださいと言っているように」
「あなたどうしてそんな事知ってるの?ここの部屋の前には何の表示も無かったし、部屋の明かりだって一度も付けていないわ」
当然のように沸く疑問。
それを投げ掛けられ、千聖はフッと笑った。
「あったじゃないか、一度だけ部屋の中が明るくなった時が。その時に見たんだよ。全てね」
それはきっと千聖がドアを開けた時の事だと思われた。
でも廊下の光が差し込んだのはほんの一瞬だった。
(あんな短い間に部屋の中を見渡した?―― 嘘だ)
そう思った瞬間、また声がした。
「それに暗くたって少しは見える。疑わしそうに俺を見ているあんたの顔だって分かるぜ」
「えっ――」
未央は思わず顔を背け、手で覆った。
「顔だけじゃない。他の事だって―― さっき見たところでは身長は高くもなく低くもなかった。いや、比較的小柄な方だ。体脂肪率は低く筋肉質。したがって、身軽で運動神経には自信があるだろう。そして、年齢のわりに胸が小さい」
「な――!ちょっと――」
聞き捨てなら無い台詞に立ち上がろうとしたが、足首が痛んで未央はまたうずくまった。
短い抗議の声は耳に届かなかったようで、千聖はさらに続けた。
「順序立てて物事を考えるより、閃きにしたがって行動する方だ。甘えん坊で淋しがり。いまだにお伽話を信じているような、ちょっと優しくするとすぐついて来るナンパしやすいタイプ」
「いい加減にして!黙って聞いてれば勝手なこと言っちゃって!」
千聖の言葉にだんだん腹が立ってきて、未央は座ったまま大きな声をあげた。