DOUBLE STEAL ~イシヲモツモノ~
「ああ、そうだ。―― それだけだ」

 薬箱をテーブルに置き、立ち上がった千聖を今度は見上げる。

「そう……」

 キッチンへ向かうその背中を見つめながら、未央はもうひとつ質問を投げた。

「ねぇ、千聖。彼女に……ティンクにまた会いたい?」

「出来る事なら」

「そう……だよね……」

 直ぐに返された答えに、未央は両手を握り締めた。

 未央も、もう一度聞きたかった。

 千聖のあの優しい声を。

 ティンクとしてでは無く、小野寺未央として。

「彼女もきっとそう思ってるよ。―― あなたに会いたいって」

 うつむいた未央は、千聖がじっと見つめている事も全く気付かずに呟いた。




…★……★……★…


☆NEXT☆

「美味い!未央、料理上手いんだな。このエビフライなんか最高だよ」

「そう?よかった。ね、千聖も何か食べれば?早く食べないとぜんぶ響に食べられちゃうよ。何が欲しい?」

「アップル」

「え?リンゴ?」

「赤くて堅くて冷たいやつだ」

「冷凍リンゴか――」

「………」


  MISSION9
  ― コメットへの挑戦状 ― へ続く。



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